あるエンジニアのひとり旅

大企業を辞めたエンジニア、研究者のちょっとした日記

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【大企業を退職】サラリーマン生活を振り返ってみた~退職後、半年が経過~

2014年3月末で大企業(大手総合電機メーカー)を退職してから,早いもので半年が経った.退職後の心境変化は今のところない.後で振り返られるように退職して半年後の考えをまとめようと思う.

 

(1) 退職理由

10年近く務めた大企業を退職した.「大企業の外の方がおもしろい,自分でしかできないことに挑戦できる」と感じるようになったため,退職を決めた.この考えは今も変わっていない.

「優秀な研究者達と画期的で世の中の役に立つ技術を開発し実用化する」という目標は,日本の大企業の研究所では達成できないと判断した.また,新たな知識,経験が得られなくなってきたことから,このままではエンジニア,研究者として駄目になると思い新たな人生を歩む選択をした.
 

(2) 日本の大企業の研究所

日本の大企業は,よほどのことが無い限り従業員を解雇しない.それ自体は悪いことでは無いが,既得権益を守ることで多くの弊害が生じている.一度,既得権を持った集団が構成されると改革は難しい.北朝鮮で一部の既得権を握った上層部が,国家の繁栄,国民の生活よりも現状の地位の維持を優先してしまっているように.

大企業で言うところの既得権とは,終身雇用,年功序列の賃金体系である.社員の終身雇用,年功序列賃金を守るために,多くの若者は派遣社員として働き続けている.社員は会社にとって血と同じだと言う.血は循環しなければ組織は腐ってしまう.

 

私が所属していた会社では,すごく優秀な人,優秀だがコミュニケーション能力にかける人,仕事が全然できない人,バブル時代の一部の人が研究所に残っている.つまり,そこそこで優秀で,コミュニケーション能力に長けている人ほど,異動になる可能性が高い.

仕事が全然できない人は,受け入れてくれる先が無いためそのまま研究所に残る.

バブル時代に入社した一部の人は,年功序列の賃金体系で高給取りになっている割に,仕事があまりできないため,受け入れ先が無くそのまま研究所に残る.

そして,すごく優秀な人,優秀でコミュニケーション能力に長けている人の一部は,会社を去っていく.

つまり,優秀な研究者はいるが,その割合が低い組織となっている.

 

私が所属していた研究所では,人数分の研究テーマ(予算)を確保する必要がある.しかし,前述の通り優秀な研究者の割合が低い.その状況で人数分の研究テーマを確保するとどうなるか.もちろん,一部の優秀な人が"頑張る"ことになる.その結果,先進的な研究ができず,ますます優秀な人から会社を去っていく.

人数分の研究テーマを確保しなければ良いではないかと思われるかもしれない.それは,研究所の予算が赤字になるため,組織を維持できない.研究所の所長は,優秀な研究者の割合が低い状況を長年放置したにも関わらず,予算を確保しろと言う.予算を確保しろと言う代わりに,予算を確保できる人材を揃えるのが上層部の仕事である.

 

(3) おわりに

現状に満足していないときにとるべき行動は,組織を改革する,組織を去るの二択だ.私は後者を選んだ.

ノーベル物理学賞を受賞した米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の中村さんが,日本の研究開発環境についてコメントされていた.日本にも,働いてみたいと憧られるレベルの企業の研究所が増えて欲しいと強く思う.